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November 24, 2008

釜の沢は静寂をもって我々を明鏡止水の心境にした

個人山行:釜の沢東俣 2008年11月23~24日

今年の草鞋納めは、釜の沢東俣にM氏とともに行ってきました。釜の沢について、その素晴らしさを今更ここで一登山者が語るまでもなく、その風光明媚な景色は多くの遡行者を引き付けて止みません。

今回は冬の気配漂う釜の沢を、冷涼な空気を味わいながら、のんびりと遡行しようと行ってきたのですが、実際にはズボンの裾は凍り、ネオプレンソックスの保温効果が限界近くに達し、あまつさえ結氷した急坂の源頭部を恐る恐るトラバースするという、のんびりとは程遠い遡行になったのでした。

Tme2_6

7時に三富PAを出発。気温は0℃付近で、都内から快適に車で来た身にこの寒さはこたえる。ただ月曜の段階で、小屋番から「雪は無いけど寒いよ」との情報を得ていたので、予測の範囲。東沢の出合いで沢装備を整え、いざ入渓。今日は水流は非常に少なく、渡渉は膝下で済むのでグレードは一見低そうだが、河岸や水面に見える浮石は全て氷でコーティングされており、よくよく見てから足を乗せないとツルっといってしまう。

乙女のナメ沢は表面が凍り始め、もう少し気温が下がればアイスクライミングができそうだ。夏に訪れた東のナメ沢も今は周囲の木々は葉を落とし、哀感が漂う。夏にM氏が落っことした防水カメラを探すも見当たらなかった。今頃落ち葉の下に埋もれているか、釜の底で静かに防水パッキンが劣化して浸水するときを待っているのだろう。

さらに進むと、西のナメ沢はもう近いうちにアイスクライミングが出来そうだ。

そして魚止めの滝に到着。わずかな陽だまりのなかで、テルモスとセットで持ってきたカップラーメンをM氏が食べる。僕は閉店セールの半額弁当だが、凍るほど冷たくなっている。暖かそうに麺をすするM氏が羨ましい。

それにしてもこの時が止まってしまったような閑寂さはなんだ。夏は常に木々の葉音が聞こえ、鳥は鳴き、鬱陶しいほどの虫が飛んでいるのに、今日は川の流れる音だけが辛うじて時が止まっていないことを証明しているかのようだ。晴れて真っ青な空以外の景色はまるでセピア調となっている。これが初冬の沢というものだろうか。適当に食事を済ませ、魚止めの滝を越えると、いよいよこの沢でもっとも優美な滝、千畳のナメ滝を遡行する。ここはいつ歩いても心が洗われる。ただここも岸周辺は凍っており、ちょっと気を許すと転びそうになるから注意を要する。

両門の滝までとにかく氷の乗った石と河岸に注意しながら進んでいる中、M氏がズボンの裾を見てみると・・・おぉ!ズボンの裾が凍っている!この沢の寒さがよくわかる。

広河原はもともと水流が少ないため、伏流となるところが多かった。この辺でようやく日が高くなり、服を乾かしながら進む。

いよいよ水師沢との出合いに到着、源頭部へのツメ開始だ。(図中赤丸部)

今回は河岸が凍っていて、多少時間がかかるのは織り込み済みだった。しかもその最たるは東沢本流と千畳のナメで、源頭部のツメは凍っていたとしても、岸を巻き気味に進めばなんとかなるだろうと思っていたため、もう核心は越えたと思っていたのは甘い考えだった。

広河原までは沢がほぼ南を向いているため、日の光が差し込みやすいのだが、水師沢から甲武信小屋までは西を向いているため、正午付近でもまだ日は入ってこない。そのため、ここから小屋まではかなり結氷し、しかも予想以上に川幅いっぱいに氷が広がっている。標高差350mの氷の沢を右岸・左岸とトラバースしながら登らなくてはならない。

M氏が撤退のての字が浮かんできたと、言っている・・・。撤退モード25%か、確かに・・でもここが初めての沢なら撤退もありえるが、この先のルートは頭に入っているし、これから時間が経つにつれて日は差し込んでくる。そして水量も減る方向であれば、ここはとりあえず登ってみるべきということで、慎重に登っていくこととした。

氷の表層から、氷山の一角のように石が見えるので、その石だけを踏みながら高度を上げていくが、一歩足を置く場所を間違えれば、滑落は免れない。氷の上に足を置くときも重力の向きと垂直抗力の向きが常に等しくなるよう気をつける。遡行時間はすでに5時間に達し、疲労で集中力が落ちてきているが、足を置く場所だけは間違えてはならない。岸を少し登ってはトラバースという動きを繰り返しながら、なんとか木賊沢の出合いまでたどり着いた。(図中緑丸部)

木賊沢は源頭部としてはもっとも明瞭は沢なだけに、沢幅が広い。ここをトラバースするにはよくよくコースを選ばなくてはならないが、もっとも沢筋が狭まったところ見つけ、トラバース成功。ここで滑落すれば百メートルは一気に落ちるだろう。

樹林を少し登ると、遠くにこの沢のゴール地点であるポンプ小屋が見える。ぜいぜい言いながら、やっとこポンプ小屋に到着。夏ならここで笛吹川の最初の一滴を飲むのだが、今日は小学生くらいの大きさの氷柱が出来上がっている。妙な好奇心からこの氷柱を壊したくなったが、木でひっぱたいても全く歯が立たない。結局M氏の回し蹴り3~4発目でやっと破壊。

13:45にようやく今日の宿泊場である甲武信小屋に到着。小屋番に、木曜くらいから一気に冷え込んでさ、沢が凍ったからK郎君たち大丈夫かなぁなんて思ってたんだよ、とあっさり言われる。その情報も後追いで欲しかった・・・・。

予想より時間が余ったので、近くの斜面で自己脱出を中心にザイルワークの勉強会。M氏からはガルーダヒッチやイタリアンヒッチなどの手ほどきを受ける。知識として知っているのと、実践を通して学ぶとでは全然違う。まだ救助訓練に参加できていない僕には大変勉強となるものだった。しかしこの寒空のなか、山頂付近の野外でロープを引き回していると、一般ハイカーから哀憐の眼差しを向けらる・・・

夜は小屋のオーナーとその他山岳会の常連と宴会。私たちの青山一丁目山岳会という名前は驚きをもって迎えられた。

小屋での荷物整理中、M氏がツェルトとして持ってきたのが実はザックカバーだというリスキーなギャグには笑わせてもらいました。

翌日は、快晴のなか雁坂峠までの稜線を爽快に歩きながら三富まで下山。特に日の出風景と富士山が素晴らしい。 Image030

今回は天気が良く、水量が少ないため体温が冷えなかったのと、結氷の沢が水師沢出合いまでだったことが成功の要因と思う。木賊沢のトラバースはザイルを使うくらいの慎重さがあっても良かったと思う。あと一週間入渓が遅ければ、沢装備のほかにアイスクライミングの装備が必要となっただろう。初冬の沢がどんなものか身を持って体感することができたのは大きな収穫だった。そして哀感漂うこの沢の風景は、静寂をもって我々の心を明鏡止水たる心境にしてくれたのでした。 文:K郎

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November 12, 2008

夕暮れの状況判断

11月2日、S講師が担当する戸隠P1尾根を主峰とする縦走山行に参加した。
P1尾根から見下ろす紅葉は、真っ赤に染まり美しかった。一方で、ピークが近づくにつれて若干の雪もあり、思わぬシーズン初のスノートレックが楽しめた。

そんな状況もあってか、コースタイムをオーバーし下山時刻がすっかり暗闇となる19時半を超えた。遅延の要因(美しい紅葉に目を奪われた。昼休みが長かった。雪を想定せず靴の選択を間違えた。。。etc)は色々と考えられるので今後に役立てるとして、状況判断によってはさらに遅れるなどの可能性もあった。

時刻が夕暮れ近くとなり、残りの行程を考えると少しずつ不安な気持が広がった。
そんな空気を察してか、S講師が「どのような行動を取るのが良いか」ということについてメンバーに考えを確認した。

結果的には、パーティをS講師率いる男性チームと、M講師率いる女性チームに別けて、男性チームが1.5倍程のペースで進み、ルート工作が必要であれば、後続するパーティのために済ませて置くことで、時間を短縮できるというS講師の判断により、暗くなる前に下山核心部を抜けることが出来た。

このような状況、かつ体力が落ちている中においては、先を急ぐ余り黙々とピッチを上げて気合で乗り切るという判断になりがちなのかもしれない。しかし今回のように、メンバーの構成やコンディション(怪我人の有無)、天候、この先のルート状況などを計算に入れることで、より幅広い状況判断ができるのだと実感した。

戸隠は深くて魅力ある山、熊は少し怖いけど、課題となった蕎麦もあわせて是非もう一度チャレンジしたい。

Mノブ

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