縦穴式雪洞(O方)
私の所属する青森の山岳会(山岳同人『流転』)では東北の山の縦走に縦穴式雪洞を多用しています。ゾンデ棒で突いて、雪の深さが60cm程度あれば作れます。『流転』版-雪山泊方法比較(エクセルファイル)
Rタイプ縦穴式雪洞
Rタイプ縦穴雪洞 完成外観
タープギリギリの時
タープの屋根をかける前の状態
雪洞の内部
翌日出発跡
この時のテーマが「白神のブナの温もりを感じる」だったのでブナの大木を入れ込んで作成しました!
①雪洞を掘る部分のみ踏み固めます。
②真っすぐに掘り下げます。
③堀った時に出たブロックを積み上げて回りを囲みます。
④シートをかけて、シートの端を強めに引っ張って固定します。
⑤ブロックは図では1段ですが、2段3段と積んでOKです。
⑥荷物は全て雪洞の中に入れます。
⑦スコップやスノーソーも雪洞の中に入れます。
⑧火災等に備え、メンバー何人かは常にナイフを首から下げておきます(テント泊と同じ)。
⑨シートの上に積もる雪は、時々パンパンと払うようにします。
⑩2月の田沢湖スキー場~秋田駒~源太岳~下倉スキー場に2泊縦走に用いました。吹雪の日が多かったですが、快適でした。
Sタイプ縦穴式雪洞
Sタイプ縦穴雪洞
雪洞の入り口
①シートの真ん中内側に雪玉を入れて、シート外側からテルテル坊主のように縛って支点を作ります。
②シートを支点の上にある樹木の枝で吊りあげます。
③シートの端を張り綱で強めに引っ張って固定します。
④高さがあるので居住性が増しますし、雪をパンパンと払う回数も少なくてすみます。
縦穴式雪洞の利点
横穴式に比べて、①設営が速い、②湿度が高くなりすぎない、③天井が下がって来ない、④酸素が欠乏するリスクが減る、⑤首から下げたナイフを使ってシートを切ることで、緊急脱出が出来る、⑥トイレ部屋の併設も容易なので、外に出なくても一晩過ごせる、等の利点があり、実用的です。
上の写真でわかるように、横穴式雪洞は雪の深さが1m50cm程度以上必要になる。中に入って掘っている間に衣服が濡れてしまう。
縦穴式雪洞の弱点
①天井のタープが結露する(テントでも結露する、横穴式は結露しない)、②しんしんと降る雪(Sタイプ縦穴を採用、さらにタープの傾斜を工夫する)、③降雨
結露した天井(手拭いでこまめにふく)
Rタイプ縦穴作りイベント
①「小学6年生のための縦穴雪洞を作って楽しむ会」イベントの様子です。、②山岳同人「流転」の主催です。、③ブロックを高く積んでも、被せたシートの張力で崩れることはなかったです。
山岳同人「流転」会長より補足説明
タープはカモシカか秀山荘の物を用いています。カモシカだったら大(だいだい色、6~10人)は2.7×3.6m、中(緑、5人まで)で2.3×2.9mのようです。素材は15Dか30Dナイロン(多分15D)。
荷物置き場ですが、四方に積んだブロックの外のタープの下に物を置くスペースはなく雪に埋まってしまいます。
Sタイプ誕生経緯ですが、たまたま人数多くて8人くらい?だったので、「大きめの覆うものにしよう」と家にある山道具の中で探してエスパースのフライを持っていったとのこと(おそらく6~7人用のテントフライ)。中心部トップを吊ったのは立体の形なのでただ被せるだけだと天井が垂れ下がるからです。Sタイプの場合は四方のブロックは正方形なり正六角形なり、円形の方がおさまりがいいです。
積雪60cmあれば十分作れます。小6生の自然クラブで校庭で作る場合、積雪40cmくらい、40cmでも余裕で作れますが、別の場所からブロックを切り出す必要はあります。
R式はテントとほぼ変わらず、湿度は高くないです。テントに比べると周りが雪なので(断熱という意味で)暖かいです。イグルー・横穴雪洞に比べても作成時の濡れがほぼなく、かつ、湿度が高くないので濡れ物も着干しできてしまいます。
空間は広いです。9人用まで経験があります。
600m~5000mで経験済み。氷以外なら、どんな雪質でもできます
弱点はしんしんと降る雪、降雨です。
S式は樹林帯で作りますが、樹林帯は風が弱い事もあり、降雪に対してより屋根雪を下ろしやすいという視点から考案されました。S式は当然風には弱いです。
通常の冬山、稜線ではしんしんと雪が降るという事は少ないので(たいていは風雪なので、タープ上に大量降雪はあまりない)、降雪で困る事は少なかったです。
降雪がある場合は酸欠に注意が必要です。少し寒いですが、タープとブロックの間を少し風が通るくらいの方が良いかも知れません、その日の天候により使い分けます。
もう一つの弱点は、タープの朝の結露です。コンロを点けると水滴となり落ちてくるので、手拭いでこまめに拭きます。風通しを少し良くしておくと結露はしなくなります。
シートの傾斜は付ける必要ないですが、降雨があるのであれば、有効と思われます。
スコップ、鋸は全て中に入れておいた方が紛失など無いです。
その日の天気の特徴を読み込んで、重要視する点を変えていく事が必要です。例えば、風が怖い日であれば、タープの固定をしっかりする(タープがめくれないように雪ブロックでさらに押さえて補強するなど)とか、しんしんと降る雪で酸欠が怖いなら、こまめにタープの雪を落とし、換気をするとか、寒さが心配なら、がっちり風が入らないような作りにするとか、などです。・・・
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