登山の自粛は必要?(国際山岳医・登山ガイド千島康稔)
【登山の自粛は本当に必要?】
国際山岳医・登山ガイドステージⅢ
千島 康稔
今の時期、屋外での活動である登山の自粛は本当に必要なのでしょうか。
「こんな時期だからこそ、山に行って解放された気分になり、ストレスを発散したい」 私もそう思います。
でも、今はもうしばらく待つべきではないでしょうか。
私なりに、「今の時期に登山をすることの危険性(弊害)」をまとめてみました。
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【宿泊を伴う、あるいは長時間におよぶ日帰り登山の危険(弊害)】
1)入山後に発症し重症化する危険
今回のCOVID-19は、感染していても無症状の人がある一方、発症後数時間で酸素投与や人工呼吸器が必要になる場合があります。なにも自覚症状がなくても、入山後に発症して急激に悪化する可能性があります。
2)遭難時の救助の困難さ
COVID-19と関係なく、怪我や体調不良で遭難したとしても、現在ではその人が新型コロナウイルスに感染していないという確証はなく、感染している可能性を考えての救助になります。原則としてヘリ救助は行いにくく、地上からの救助者も感染のリスクを考えて行動しなくてはいけません(万が一、ヘリのパイロットが濃厚接触者になれば社会的影響は非常に大きいです)
また、たとえヘリ救助が行われたとしても、天候や場所によっては数時間から一晩以上、現場で待機する必要があります。
3)標高が高く低酸素になる
標高3000メートルで平地の7割の気圧、標高1800メートルでも平地の8割の気圧であり、呼吸器疾患の症状がより悪化しやすい環境です。
4)宿泊が伴えば山小屋・テント泊のいずれも三密の状態を免れない。
また、十分な水が確保できず手洗いなどがしにくく、ひとりの無症状の感染者がいれば、全員に感染が広がる可能性があります。
【郊外の低山など、数時間で日帰りできる登山の危険(弊害)】
1)登山口までの移動に伴う感染の危険
公共交通機関を利用することはもとより、車に乗り合わせての移動でも三密は避けられず、感染拡大の可能性があります。
また、登山口周辺の住民のリスク・不安も考慮すべき。登山口周辺は高齢者がいたり医療過疎地域であることが多いです。
2)遭難時の救助の困難さ
たとえ日帰りの低山でも遭難の可能性はあり、その時のリスクは前述の通り。自らの遭難のために多くの人をリスクにさらすことになります。
3)マイクロ飛沫による感染の可能性
登山やジョギングなど荒い呼吸をしているときは、大声で話しているときと同様に、周囲にマイクロ飛沫を飛ばしやすいです。
近距離で長い時間登山を続けたり、多くの登山者とすれ違ったりしていると、マイクロ飛沫による感染の危険があります。
(最近は、混雑したコースでのジョギングも控えるように。ジョギングエチケットも提唱されています)
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