タイブロックと沢登り(松浦)
タイブロック(写真中央の銀色の器具)はスリングによるオートブロックヒッチ(ブルージック結び等)よりも早くセット出来、動きもスムーズ、小さくて軽い、など便利だ。内部のギザギザの棘がロープに食い込むのでロープを痛めると言われているが、落ちなければそれほどロープは痛めない、というか落ちるような難しい所ではロープフィックスを使って登るべきではない(まず落ちることはないけれど、落ちたら大怪我をするような場合に使う)。
タイブロックがない場合はフリクションヒッチを使う、下写真はカラビナバッチマン(フリクションヒッチは数種ある)、ダイニーマスリングを用いているがダイニーマは融点が170度ぐらいと低いので、ナイロン(融点220度くらい)のブルージック専用ロープを使うべきだ、長さ170cm直径6mmのロープを輪にしてダブルフィッシャーマン結びでつないで作るあたりが一般的だが、知らずに150cmで2本作る人が多く(3m買って半分にするから)、長さが足りなくて、フリクションが弱く持ち運びにも不便なスリングになってしまうので気を付けよう。
カラビナバッチマン(フリクションヒッチ別名オートブロックヒッチの一種)
ダブルフィッシャーマン結びによる連結
<追伸>
①タイブロックは金属なので融点を気にしなくても良い。
②リーダーがタイブロックを中間支点にセットしながら進む方法がある。リーダーがロープを固定する前にセカンドがスタート出来て、セカンドが落ちてもリーダーにテンションがかからない。15mコンテニアスで有効に使えそうなのだが、セカンドが落ちそうな所ではスタッカットを使うべきだし、セカンドがロープに頼って(ロープを引っ張って)登るとタイブロックの棘がロープに食い込んでしまう。なのでこの方法は、緊急時、複数人が高速で悪場を通過しなければならないような場合に限って使うのが良いだろう(早さが求められる時用)。
15mコンテでタイブロックを中間支点に使う
タイブロックやオートブロックヒッチを使う沢登りの危険を知っていよう
①クライマーが墜落して水流の中に吊られてしまった場合に救助に時間がかかる。
②クライマーの墜落を自動で止める器具(タイブロック,ルベルソキューブ,ATCガイド,等)はテンションがかかればかかるほど解除に時間がかかる。
③ロープのテンションを解除する方法を定期的に練習している沢登りのリーダーは少ないと知っていよう。
④ロープをフィックスする時、ロープをアップしてさらにそれを仮固定していなければ、そして充分な長さが(30mロープなら15m以上が)上がっていなければ、クライマーを降ろすことが出来ない。
⑤中間支点をセットして登ると中間支点と中間支点の間に吊られるので、ロープを緩めても救助出来ない可能性がある。
⑥到着点でリーダーがロープを固定しても、打合せ不良等が原因で、ビレーヤーが出発点でロープを固定することが無ければ、トラバースするルートでの墜落を止められない。
⑦水流のことを考えたロープワークを習得(or研究)しているリーダーは少ない(渡渉のロープワーク、へつりのロープワーク、トラバースのロープワーク、など、研究していないかも?)。以下の質問をリーダーにしてもいいかも知れないけれど、「あなた」がこの質問に答えられるようになってほしい、リーダー任せは危ない。
「沢登りの”へつり”の場合、リーダーがロープを中間支点にクリップしながら進んではいけない場合が多いのはなぜですか?」
「沢登りの"へつり”と”渡渉"の場合、ビレーヤーはビレー器具を使ってビレーしないでロープを手に持って繰り出すだけにするのはなぜですか?」
⑧「沢登り」は「岩登りマルチピッチ」より易しいジャンルだという感覚が一般的だけど、実は相当に難しい。そういう感覚のリーダーに連れて行かれたら危ない。
⑨増水したら難しさのグレードは2段階以上高くなることがあまり知られていない。梅雨明け直後は晴天だけど沢は増水している(天気だけ見て増水を考えてない沢の企画は危ない)。
⑩沢登りの本質は「なるべく濡れないように進む」なのに、「シャワークライミング」とか「泳ぎ」が沢登りだと思っている人が多い(濡れることは大きく疲労するので必要以外は避けるべき)。
*話をもどして、滝を登るロープワークはロープウェイ方式(ピストン方式)を基本として、ロープをフィックスしてタイブロックやフリクションヒッチをを使って登る方式(アッセンダー方式)を使うのは、水流に吊られる可能性がない場合に限らなければならない。
水流のある場所ではロープフィックスは使わない。セカンドクライマーを降ろせるように、エイト環かハーフマストヒッチでビレーする。
渡り終えたらロープを回収出来るようにして渡渉するロープワーク(トラバースでも使える)。
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