工事中 セルフビレー【メインロープ方式 ランヤード方式】(杉原)
左図:リーダーがビレーポイントについて、メインロープ(青)でセルフビレーをセット
右図:リーダーがビレーポイントについて、ランヤード(赤) でセルフビレーをセット
左図:セカンドがビレーポイントについて、リーダーもセカンドもメインロープ(青)でセルフビレーをセット
右図:セカンドがビレーポイントについて、リーダーもセカンドもランヤード(赤と橙)でセルフビレーをセット
長い間、メインロープを使い、クローブヒッチでセルフビレー(以下:セルフ)をセットすることが基本と教えられて来ました。でも、最近は、メインロープでなくて、ランヤードでセルフをセットするのを見ることが多くなりました。その最大の理由は「初心者でも簡単で確実にセルフビレーがセット出来る」という点にあると思われます。
マルチピッチのルートに初心者でセカンドでのみ登るタイプの方(以下:初心者)を連れて行く場合、そういう初心者がクローブヒッチを結んでセルフをしようとすると、時間がかかったり、間違えて結んだり、します。ところが、その人がにランヤードを使っていれば、簡単確実にセルフをセットしてくれます。支点にランヤードの安全環付カラビナをかけるだけだからです。連れて行く側のリーダーも、ランヤードを使った方が、その、初心者がたぶん使うことがない「伝統的なメインロープによるセルフビレー」を中途半端に学ぶことなしで済ませられます。
下の「落下係数の計算4つ」を見て下さい、セルフビレーのランヤードにかかる衝撃加重は、ゼロピンで墜落するのと同じかやや小さいですが、1ピン目での墜落よりも大きいです。なので、ランヤードはほとんど伸びないダイニーマのパーソナルアンカーチェーンよりも、よく伸びるナイロンロープのランヤードが良いと言えます。伝統的なメインロープクローブヒッチのセルフはメインロープが細いダブルロープ(シングルロープより伸びる)であることと、クローブヒッチに衝撃吸収力があるという点で、ロープランヤードよりさらに良いと言えます。それに、ランヤードの分の体積と重さを軽量化出来ます。その体積と重さは半日分の行動食くらいは十分あります。
衝撃加重の比較:スリングランヤード(例:PAS)>ロープランヤード>メインロープ&クローブヒッチ
<テラスから不意に落ちた場合のランヤード(赤)の落下係数>
ランヤードの長さを1mとすると、最大の落下距離は1m、墜落距離1m÷ロープの長さ1m=落下係数 1
*メインロープセルフでも落下係数は1で同じです。
<ゼロピンから1m登って、リーダーが落ちた場合の落下係数>
ビレーヤーからゼロピンまでを1mとします。墜落距離2m÷ロープの長さ2m=落下係数1
<ゼロピンから2m登って、リーダーが落ちた場合の落下係数>
墜落距離4m÷ロープの長さ3m=落下係数1.33
*落下係数は1.33に上がります。なので、1ピン目はなるべく早くセットしなければなりません 。
<ゼロピンから1ピン目を経て3m登った所でリーダーが落ちた場合の落下係数>
ゼロピンから1ピン目までを1mとします。墜落距離2m÷ロープの長さ3m=落下係数 0.66
その1、Aさんだけがリードする万年セカンド方式の場合
Aさん(リーダー)はAさんとBさんが共通に使用するセルフ用の支点を作ります。Aさんはランヤードでセルフビレーをセットし、そのセルフ用支点を使って、Bさん(リードしない初心者)を登らせます。
Bさんがテラスまで登って来たら、ランヤードでセルフをセットさせます。
セルフがセット出来たら、ロープの上下を入れ替えます。上下の入れ替えには2つの方法があって、一つは、Aさんのセルフに乗っていたロープ束を上下反転させて、Bさんのセルフに乗せる方法、もう一つはAさんのセルフの乗っていたロープを上から順に1折り返しずつBさんのセルフに乗せ換えて行く方法です。次のピッチが難しい場合はロープが速く出なくなると困るので、後者の1折り返しずつ乗せ換える方法を使います。ロープを入れ替えたら、BさんのビレーでAさんが2ピッチ目のリードを開始します。テラスが広い場合はロープをセルフに乗せずに足元に置いて上下を入れ替える方法が方が確実にロープが出ます(上から2番目の図の青ロープの位置を参照)。
その2、CさんとDさんが交代でリードするつるべ方式の場合
つるべ方式なので、Cさんはメインロープクローブヒッチ連結でセルフ支点を作ることが出来ます。スリングを使う方法とランヤードを使う方法があります。Cさんはセルフ用に作った支点を使ってDさんを登らせます。Dさんがテラスまで来たら、スリング又はランヤードで仮のセルフをセットします。Dさんの仮セルフが出来たら、Cさんはセカンドのビレーモードからトップのビレーモードに切り替えます。切り替えが終わったら、Dさんが2ピッチ目のリードを開始します。万年セカンド方式にあるロープの入れ替えは不要です。
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